クラシックファンのためのコンサートの主旨

 このコンサートを企画するにあたり、主なポイントは次の3つがあげられます。

  • Ⅰ、コンサートの内容を充実したものにする。
  • Ⅱ、無料のコンサートにする。
  • Ⅲ、資金はすべて寄付でまかなう。


Ⅰ、コンサートの内容を充実したものにする。

 昨今、あちらこちらで肩のこらないコンサートが行なわれています。プログラムには耳慣れた曲が多く入っており、クラシックという分野にこだわらずに、多分野にわたって構成されているものも少なくありません。その方が、クラシックという堅苦しい先入観を越えて一般の人達が親しめるという考え方です。

 しかし、このマンスリーコンサートは、少数であれ本格的なものを求める人たち、芸術としてのクラシック音楽の魅力を求める人たちの為のものでありたいと思っています。このことは、前述のようなコンサートが多く、また、一般的な意味においてそのニーズも高まっているという世の中の風潮におもねず、クラシック音楽本来の姿を現したいと考えるのです。

 今あえて、こう考えるのは、一つには、音楽というものが、本来の形において輝きを放った時、そこに自ずと感動や癒しが出てくるという真理をもっているからです。さらには、聴く側も演奏する側もそこから力を得て、内面を豊かに満たしていくことが、幸福につながっていくという芸術の原点に立ち返り、深い意味においてクラシック音楽を文化として受けとめることが出来るからです。アーティストが質の高いものを供給し、それを受け取る聴き手がそこにいるとき、その場所から真の文化の向上が生まれるという信念に基づいて、このコンサートの内容の充実をはかりたいと思っています。

Ⅱ、無料のコンサートにする。

 外来演奏家のコンサートやその他の質の高いコンサートは、今の日本では数多くあります。多くの場合、そのチケットは高く、一部の熱心な愛好家や専門家を含む聴衆によって支えられているのが現状です。それは、生活の中で一つの“特別なこと”なのです。朝早くから夜遅くまで働くサラリーマンにとって、事前にチケットを買い、コンサート会場に足を運び、2時間をそこで費やし、帰った翌日にはまた仕事が待っている、ということは精神的にも経済的にも、かなりの犠牲を強いられることでもあります。そう日常的に出来ることではありません。
 日本人の生活スタイルが、欧米とは違って、仕事中心であるために、こういった類の文化の普及、向上にはつながりにくいのです。このマンスリーコンサートにおいては、そんな矛盾を少しでも解消するために、一時間というあまり負担にならない時間設定をし、チケットなしで、すなわち無料でいつでも気楽に立ち寄って頂くことを考えました。たとえ、月一回でもそれが生活の一部分となり、そこに確保された一時間がリフレッシュの時になるよう、また生演奏ということ自体の素晴らしさが少しでも生活に潤いを与え、精神的な豊かさにつながる事を期待しています。

Ⅲ、資金はすべて寄付でまかなう。

 IT技術のめざましい発達、生活水準の向上に伴い、私たち日本人が今考えなくてはならない21世紀の課題のひとつに、心の豊かさを獲得し、広げていくということがあると思います。お金や便利さとは別のところにある、今、現代人が持っている虚無感や不信、ストレスは、既に歪んだ形で犯罪などに現れています。

 芸術が一つの分野として、単なる特別な世界で存在するのでなく、社会に関与し、参加していく事は、非常に価値のある事と思われます。私は、クラシック音楽の演奏家という立場から、この分野に立ってこの企画を実行していきたいと考えています。

 企業、団体、個人の皆さんに、こういった意味をふまえてご理解をいただいた上で、21世紀の社会参加という意識と価値観のもとに、寄附という形でこのプロジェクトに加わっていただき、これを実現していく事に大きな意味があると考えます。